2008 Fiscal Year Annual Research Report
エルゴード理論との相互関係に着目したフォンノイマン環の研究
Project/Area Number |
19540206
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山ノ内 毅彦 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 准教授 (30241293)
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Keywords | 測度付き同値関係 / Commensurable / almost normal / Hecke pair / フォンノイマン環 / 数論 / Hecke環 / エルゴード理論 |
Research Abstract |
本年度は, 測度付きエルゴード同値関係における部分同値関係の中でも, 以前の研究で導入した概念であるところの「commensurable」という性質を満たすエルゴード部分同値関係について, 連携研究者である青井氏と集中的に研究を行った(研究結果をまとめた論文は投稿準備中). その最も特質すべき成果は, 当初から予測していたように, この概念が他分野である数論との興味深い繋がりがあることを明らかにしたことである. 具体的には, 次の2つの結果を得ることができた : (1)まず元になる測度付きエルゴード同値関係Rが離散群Gの測度空間へのエルゴード作用から構成されていて(このような場合がRの最もプロトタイプな例であるが), さらにその部分同値関係Sが群Gのある部分群Hの作用により実現されている場合, SがRにおいて我々が定義した意味でcommensurableであることと, 部分群HがGにおいて数論における意味でalmost normal, あるいはHeckepairであることが同値であることを明らかにした ; (2)我々は, 一般の組(R, S)からこの組の本質的情報を備えたフォンノイマン環Mを標準的に構成する方法を本年度の研究において開発したが, この組(R, S)が(1)で挙げたような具体例から発生している場合, この作用素環Mは数論で呼ばれるところの(G, H)から構成される. Hecke環と本質的に同型であることを明らかにした. 以上の結果は, 作用素環あるいはエルゴード理論と, それとは一見全く異なる数学分野である数論との予想もしなかった結びつきを提示したことで非常に意義深いものであると言える.
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