2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540213
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
夏目 利一 Nagoya Institute of Technology, 工学研究科, 教授 (00125890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 俊明 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (60191855)
中村 美浩 名古屋工業大学, 工学研究科, 准教授 (50155868)
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Keywords | 非可換幾何学 / 量子曲面 / ねじれスペクトラルトリプル / サイクリックコサイクル |
Research Abstract |
本研究の目的はコペンハーゲン大学のR.Nest氏との共同研究で得られた量子化されたリーマン面に関連して非可換幾何学を展開することである。非可換多様体はスピン多様体上のディラック作用素をモデルとしたスペクトル三つ組の言葉で定式化される。 本研究の初年度にあたる19年度、上記論文で得られた量子リーマン面(これは非可換C*-環である)に対してそれまでの予備的研究において得られたスペクトル三つ組みの候補の解析を行ない、基本的性質を満たすことを示した。最終年度にあたる20年度は最終目標であるガウス・ボンネの定理の量子化版を示すことを目的としたが、残念ながら最終目標の達成にはいたっていない。閉リーマン面の最も重要な性質の一つは負定曲率を持つリーマン計量の存在である。この計量に対応するディラック作用素が定めるスペクトル三つ組の言葉で断面曲率(ガウス曲率)が負であることを定式化することが次の大きな目標である。リーマン計量に付随した断面曲率以外の概念としてスカラー曲率がある。スカラー曲率はリヒネロヴィッチの定理を経由してディラック作用素と結ばれている。現時点ではディラック作用素と断面曲率との直接的な関わり合いは知られていないが、コンヌ・プリンシプルによればディラック作用素はリーマン計量に関する全てのデータを含み、断面曲率とも関わり合いを持っているはずである。通常の幾何学的設定で断面曲率とディラック作用素とのより直接的な関わり合いを明らかにすることが、本研究の目的達成の重要なステップである。このステップが予測された以上に困難さをもたらしたことが最終目的を達成できなかった最大の理由である。 最終目標は達成できなかったが、そのプロセスでニューヨーク州立大学のC.L.Olsen氏との共同研究で得られた非可換2次元球面に対してH.Moscoviciにより導入された「ねじれスペクトラル・トリプル」が構成できることが分かり、同氏との研究で得られたテープリッツ作用素の指数定理を、ねじれスペクトラルトリプルに付随したChern指標の言葉で書き直すことに成功した。現在細部のチェックを行ないつつ論文に纏めている段階である。
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