Research Abstract |
主として3次元ユークリッド空間内の曲面に関する変分問題の解についての研究を行った. 1.曲面上の各点における法線方向に依存する表面エネルギーの曲面上での和(つまり積分)を非等方的表面エネルギーと呼ぶ.これは,たとえば結晶やある種の液晶などのエネルギーの数学的モデルを与える.曲面が囲む体積を変えない変分に対する非等方的表面エネルギーの臨界点を非等方的平均曲率一定曲面(以下ではCAMC曲面と略記する)と呼ぶ.CAMC曲面の研究は,物理化学,結晶学,冶金学,生物学などへの応用もある重要な研究課題である.同じ体積を囲む閉曲面全体の中で非等方的表面エネルギーの最小値を与える曲面は,ウルフ図形(及びその相似)と呼ばれている.本研究では,種数0のCAMC閉曲面の一意性に関する研究を行った.その一環として,非等方的臍点の概念を定義し,このような点はウルフ図形以外のCAMC曲面上では孤立点であることを証明した.なお,ウルフ図形については,すべての点が非等方的臍点である. 2.平均曲率一定曲面(以下ではCMC曲面と略記する)は,曲面が囲む体積を変えない変分に対する面積(汎関数)の臨界点であり,上述のCAMC曲面の特別な場合である.CMC曲面は,前述のような変分に対する面積の第2変分が非負であるとき,安定であると言われる.特に,エネルギー極小解は安定であり,CMC曲面の安定性を決定することは応用上も重要である.CMC回転面はDelaunay曲面と呼ばれ,CMC曲面の基本的な例を与えると共に,一般のCMC曲面の研究においても重要な役割を果たしている.Delaunay曲面は,平面,球面,円柱,catenoid, unduloid, nodoidの6種類に分けられる.本研究では,Delaunay曲面の安定領域の決定について研究した.平面,球面,円柱については既知である.unduloid,及び,nodoidの曲率正の部分について,最大の安定領域を決定する美しい結果を得た.
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