Research Abstract |
研究代表者谷口は,本研究の1年目に引き続き,まず2変数非対称可換微分作用素対の解析を行った.1年目はポテンシャル関数が特異性を持つ場合に興味を集中したが,2年目は特異性を持つ場合の他に,必ずしも特異性を持たない場合も考察の対象とした.しかし思うような結果は得られなかったため,本研究と関わるような,周辺の分野について研究を行った。 偏微分作用素P, Qが可換ではなくても,可換に近い,例えば[P, Q]=A P (Aは微分作用素)と表されるなら,完全可積分系に近い性質を持つことが期待される.このような微分作用素系は,リー群の表現の行列成分を特徴付ける微分方程式系によく現れるので,表現論を用いて典型例を構成することには意味があるであろう.このような理由から,本年度,不定値スピノル群Spin(2n,2)の離散系列Whittaker関数に関する研究を行った。その結果,この場合のWhittaker関数はHorn系と呼ばれる超幾何偏微分方程式系によって特徴付けられることを示し,更にその解のBarnes型積分表示を得た. 連携研究者伊藤はBC_n型Jackson積分に関するq^-差分方程式の研究を行い,BC_1型Jackson積分のq^-差分方程式を一階連立差分方程式系で表し,その係数行列をガウス分解の形で表示した.また真田ゆかり氏と共同で,この差分方程式の解の接続公式を,さらに一般のBC_n型の場合にも接続公式を具体的に与えた.一方,van Diejen氏と共同でG_2型Macdonald多項式を固有関数にもつ可換q^-差分作用素を具体的に構成した.
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