Research Abstract |
本研究は,北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡や国内外の他の電波望遠鏡を用いて,銀河系内の広い範囲に渡って星形成領域における高密度分子ガスの分布とその物理状態を観測的に明らかにするものである.初年度は,主に苫小牧望遠鏡を使って近傍の小質量星形成領域であるおうし座分子雲,大質量星形成領域M17,W51,W43等のアンモニア分子スペクトル線の観測を実施,また,国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m望遠鏡を用いて大質量星形成領域W51の同スペクトル線の高空間分解能観測を実施した.その結果,M17については,大質量星形成の活発な分子雲Bとそれほど活発でない分子雲Aについて,高密度分子ガスの温度に違いがないこと,一方で,高密度分子ガスの量には差があること,さらにその差は,過去に行われた一酸化炭素分子のスペクトル線観測から明らかになっている分子雲コアの個数とよい相関があることが明らかになった.これは,大質量星の形成の条件が,個々のコアの性質によるのではなく,コアの個数と関係していることを示している.さらに,苫小牧望遠鏡を用いたアンモニア分子スペクトル線の探査が,実際には空間的に分解せずに分子雲コアの個数を数え上げることができるということを示したことになる.一方で,銀河系内で最も活発な星形成領域の一つであるW51では,分子雲スケールで分子ガスの温度が高いことが明らかになった.高分解能観測については現在データの解析中である.以上の結果は,星形成,高密度分子ガスの形成に,銀河スケールでのメカニズムが働いている可能性を示唆している.並行して行った近傍の渦巻銀河における分子ガスの分布の定量化も,銀河スケールで高密度分子ガスの分布,その結果としての星形成が影響されること,さらにそれが銀河の進化と関係している可能性があることを示した.以上の結果は,日本天文学会等で発表し,現在論文を執筆中である.
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