Research Abstract |
初年度に引き続き, 北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡を用いた銀河系内の星形成領域に対するアンモニア分子スペクトル線探査観測を中心に実施した. 特に, 本年度は分光計を増設することにより, アンモニア分子の3本の異なる遷移スペクトル線に加え, 一硫化二炭素ラジカルのスペクトル線も同時に探査を行い, 高密度分子ガスの進化段階の違いを調べることを目指した. その結果, 本年度観測を実施した天体はいずれも進化が著しく早い段階にはないことが判明した. また, 銀河系内の非常に活発な星形成領域(W51)において, 分子雲スケールでの加熱が起こっていること, その要因が活発な星形成にある可能性があることを見出した. さらにこの高温領域には100Kを超える分子ガスが存在することが, 前年度に実施した国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡による高分解能高感度観測のデータ解析から明らかになった. 一方, W51を除く天体では分子ガスの温度は20K程度であり, 星形成の規模や形成される恒星の質量の違いによって有意な違いはこれまでのところ見られていない. アンモニア分子スペクトル線の観測と並行して, 銀河スケールでの分子雲の性質の違いの有無を調べるために, 銀河系外の棒渦巻銀河の分子ガスの観測・研究も実施した. 特に, 一酸化炭素分子の複数のスペクトル線の観測から, 棒状構造に付随する分子ガスの密度が他の円盤部に比べて低いこと, また, 分子ガスの速度分散は棒状構造の方が大きく, 且つ速度分散が大きいほど星形成効率が下がる傾向を見出した. さらに, 棒状部の前面に生じる衝撃波領域において, 衝撃波の通過の前後で, 分子ガスの密度に違いがあることが明らかになった. これは, 棒状部での激しいガスの運動によって, 分子ガスの密度が高くなれず, 結果的に星形成の効率が下がるというシナリオを裏付けるものである.
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