2007 Fiscal Year Annual Research Report
銀河系中心核「いて座A*」への質量供給過程とその進化に関する観測的研究
Project/Area Number |
19540237
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 朋治 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (10291056)
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Keywords | 宇宙物理 / 電波天文学 |
Research Abstract |
今年度は本研究課題の初年度にあたり、下記に挙げる観測的研究を精力的に行った。 1.野辺山45m電波望遠鏡によるミリ波分子輝線サーベイ 国立天文台野辺山の45m電波望遠鏡を使用して、高速度コンパクト雲方向の^<13>CO回転スペクトル線観測と、中心核円盤のHCN, HNC, HCO^+, N_2H^+回転スペクトル線の観測を行った。前者の観測から、高速度コンパクト雲の精密な物理状態が評価でき、これから超新星衝撃波通過後の進化過程をトレース出来る可能性を示した。また後者の観測からは、中心核円盤の化学的年齢が若いことが明らかにされ、それが中心核に落ちてきた分子雲が分裂して形成されたものではなく、その場所に集積した原子相のガスが分子相へと転換する事によって形成された可能性が高い事が示された。 2.ASTE望遠鏡によるサブミリ波分子輝線サーベイ 南米チリのアタカマ砂漠に設置されたサブミリ波望遠鏡ASTEを使用して、CO J=3-2スペクトル線によるCentra Molecular Zoneのサーベイ観測を進めた。観測は今現在も進行中であり、CO J=3-2輝線データで同定された高速度コンパクト雲をほぼ全てカバーする膨大なサーベイデータが取得されつつある。 3.すばる望遠鏡を使用した大質量星団の探査 国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡を使用して、高速度コンパクト雲方向のKs-band撮像観測を行い、大質量星団の探査を行った。ほとんどの高速度コンパクト雲方向にはHII領域がないことから、これらに付随する星団では既に15太陽質量以上のO型星は死滅しており、B型星が光度の大部分を担っていると考えられる。4夜の観測で5つの高速度コンパクト雲の撮像を行い、うち3つについて大質量星団と思しき星の集団を検出した。 4.すざく衛星による巨大星団の探査 京都大学の小山勝二教授、鶴剛准教授のグループと共同で、「すざく」衛星によるX線サーベイによって高速度コンパクト雲に付随する巨大星団および超新星残骸の探査を進めている。サーベイは現在進行中であるが、意外なことにX線源と高速度コンパクト雲の明確な対応関係は、今のところ見出されていない。
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