Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続いてすばる望遠鏡などの大型観測装置で遠方銀河の近赤外線分光観測を行った。すばる望遠鏡による観測は,H21年に近赤外分光撮像装置(MOIRCS)で3夜行ったが,装置不良と天候不順のため予定した品質のデータはまだ取れていない。ただし,幸いなことに明るいp BzK銀河のいくつかについてはデータが取得できたので,解析を行っている。一方,当初予定していた,すばる望遠鏡のレーザーガイド補償光学装置(AO)も光ファイバー分光装置(FMOS)もまだ試験観測の途中であり,実際の観測には使用できない状況にある。このような状況を考慮して,本年度もVLT望遠鏡での遠方銀河の近赤外線波長域における三次元分光観測(SINFONI)を欧州の共同研究者と行い,z〜1.5-2.5にある68個のs BzK銀河の電離ガスの運動,銀河の形態,星の種族の物理的特性を調べた。観測は赤外域であるが,静止波長ではHα輝線にあたる。これらの銀河の星質量,星形成率,年齢の平均値は,それぞれ,3×10^<10>Mo, 70Mo/年,30億年である。二次元マッピングの空間分解能は1.5kpcであり,AO装置を使用しない場合(4-5kpc)と比べて格段に優れた分解能であることがわかる。Hα輝線で見るとこれらの銀河の大多数は不規則か或いはクランプな構造をしている。およそ1/3は乱流状態にある円盤銀河であり,1/3はコンパクトで速度分散が卓越している。残りの1/3は相互作用銀河である。ガス円盤を持つ銀河の割合は銀河の質量が大きくなるほど増える傾向にある。星と電離ガスとが混ざり合った状態にあるが,ガスの多い領域はダストに覆われており,活発な星形成を示している。これらの銀河の様々な観測的な特徴は楕円銀河の形成過程を現していると考えられるが,なぜ,ガス円盤が卓越する銀河が急速にガスの無い楕円銀河へと進化するのか,新たな謎を問いかけている。
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