2007 Fiscal Year Annual Research Report
超対称模型に基づく宇宙進化シナリオの構築と、そのLHC・ILCを用いた検証
Project/Area Number |
19540255
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
諸井 健夫 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60322997)
|
Keywords | 素粒子論 / 宇宙論 / 超対称模型 / 加速器実験 |
Research Abstract |
平成19年度は、大きく分けて二つのテーマに関する研究を行った。まず第1には、超対称模型が宇宙進化、特にビッグバン元素合成に与える影響に関しての研究である。超対称模型においては多くの場合、1秒以上という極めて長い寿命を持つ粒子が現れる。それらは宇宙初期に生成され、ビッグバン元素合成後に崩壊することにより、標準的な元素合成過程で生成される軽元素(重水素、ヘリウム、リチウム等)の量に影響を与え、観測と矛盾する宇宙進化のシナリオを導く可能性がある。平成19年度には特に、ゲージメディエーション模型と呼ばれる模型など超寿命スタウ粒子が現れるシナリオがビッグバン元素合成に与える影響について研究した。そして、超寿命スタウ粒子が現れるシナリオに対する制限を定量的に求めることに成功した。この結果は超対称模型に基づく宇宙進化のシナリオを構築する上での重要な情報を与える。 第2のテーマは、超対称模型のLHC実験における検証である。平成20年には開始されるLHC実験において超対称粒子は重要なターゲットのひとつであるが、LHCにおける超対称粒子探索の方法は超対称模型の詳細によるため、様々な場合についての研究を行っておく必要がある。平成19年度においては、特にアノマリーメディエーション模型と呼ばれる模型がLHC実験において検証され得るかについての議論を行った。この模型の大きな特徴として、電荷を持ったウィーノ粒子が5cm程度という(素粒子論的観点からは)極めて長い崩壊長を持つことが挙げられる。本研究においてはこの粒子をLHC実験を用いて探索する手法を研究し、特にATLAS検出器内のTRT検出装置を用いることでウィーノ粒子の性質を探ることができる可能性があることを明らかにした。このことは、近い将来に開始されるLHC実験において、もしもアノマリーメディエーション模型が正しかった場合、実験の進め方についての重要な指針を与えるものである。
|
Research Products
(4 results)