2008 Fiscal Year Annual Research Report
超対称模型に基づく宇宙進化シナリオの構築と、そのLHC・ILCを用いた検証
Project/Area Number |
19540255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
諸井 健夫 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60322997)
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Keywords | 素粒子物理学 / 加速器物理学 / 超対称模型 |
Research Abstract |
平成20年度は、大きく分けて二つのテーマに関する研究を行った。まず第1には、超対称模型に現れえる不安定な暗黒物質から生じる、高エネルギー宇宙線の研究である。特に最近のPAMELAやATICといった高エネルギー電子・陽電子線の観測は、宇宙線に含まれる電子や陽電子のフラックスが標準的な計算の結果を大きく超過していることを示唆している。本研究においては、Rパリティの小さな破れにより超対称模型における暗黒物質が極めて長いが有限の寿命を持つ場合、それら観測されている電子・陽電子線のフラックスが正しく説明できることを明らかにした。また、このシナリオが正しい場合、近い将来行われるFermi実験によって測定されるガンマ線フラックスにも特徴的なシグナルが現れ得ることを明らかにした。また、同様のシナリオで期待される銀河内でのシンクロトロン放射線のフラックスについても議論をおこなった。 第2のテーマは、LHC実験における標準模型を超える新しい物理の研究の可能性である。特に本年度は、超寿命超対称粒子がLHCで生成され得る場合、その寿命を測定する方法について議論し、寿命が約1msより短い場合、寿命測定が可能であることを明らかにした。ここで議論した手法は、超寿命粒子が生じるような素粒子模型においては一般に用いることができるものであり、多くの応用が期待できるものである。また、超対称模型以外の素粒子模型(例えばLittest Higgs模型と呼ばれる模型)をLHCにおいて研究する可能性についても議論した。
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