2008 Fiscal Year Annual Research Report
中性子星・ブラックホール連星の合体に対する数値的研究
Project/Area Number |
19540263
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 大 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80252576)
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Keywords | 相対論 / 重力波 / ブラックホール / 中性子星 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ブラックホールと中性子星からなる近接連星の時間進化と合体の様子を数値シミュレーションにより解明することである。今年度はまず適合多層格子を用いた新しいコードSACRAの開発を進めた。その結果、これまでよりも格段に少ないコンピュータ資源でこれまで以上の分解能の計算が可能になった。SACRAコードの性能についてまとめた論文はすでに発表済みである。その後、SACRAコードを用いてブラックホール-中性子星連星の合体のシミュレーションを系統的に実行した。その結果、以下のようなことが明らかになった。(2)中性子星が合体前に潮汐破壊される条件は、中性子星の半径に強く依存するが、一般的にはブラックホールの質量が軽い場合に限られる。例えば、太陽の1.35倍の質量を持つ中性子星を考える場合、その半径が14kmなら、ブラックホールの質量が太陽の約4倍以下の場合にのみ潮汐破壊が起こる。半径が12.5kmであれば、この閾値が太陽の3倍程度までさらに下がる。(2)潮汐破壊後、中性子星の物質はブラックホール周りにばら撒かれるが、大部分は最終的にはブラックホールに飲み込まれる。太陽の0.01倍以上の降着円盤がブラックホール周りに誕生する条件は非常に厳しく、例えば、質量が太陽の1.35倍、半径が14kmの中性子星を想定する場合、ブラックホールの質量が太陽の約3倍以下である必要がある。仮に中性子星の半径が11km程度であれば、このような円盤は、ブラックホールの質量が太陽の2.7倍でも誕生しない。(3)潮汐破壊が起こる場合、放射される重力波の振幅は急激に減衰する。潮汐破壊時の重力波の周波数は、中性子星の半径に強く依存するので、質量の小さいブラックホールと中性子星の合体時の重力波を観測することが出来れば、中性子星の半径に制限を与えることが可能である。以上の結果をまとめた論文を平成20年12月に投稿し、現在査読中である。その他にも、久徳らと、ブラックホール・中性子星の平衡形状に関する研究を行い、これに関しては、現在論文作成中である。
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