2007 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDによるストレンジネスを含むハドロン構造の研究
Project/Area Number |
19540265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (60332590)
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Keywords | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / フレーバー対称性の破れ / ハドロン物理 / カビボ・小林・益川行列 / 素粒子標準模型 / 核子構造 / 弱い相互作用 |
Research Abstract |
素粒子標準模型の検証および標準模型を超える実験的シグナルの発見に関連して、カビボ-小林-益川行列要素(CKM行列要素)のユニタリティの検証は現代素粒子論において重要な課題の一つである。現在実験的に最も精度が高く測定されているCKM行列要素は行列の第一行目(Vud, Vus, Vub)である。Vubはその他の要素に対して2桁小さいのでほとんど無視することができることから、ユニタリティの要請はVubとVusの2乗和が1になるかどうかで判定される。今年度の研究では、Vusの決定に必要なK中間子の弱い相互作用による崩壊の形状因子f_+(q^2)の測定が主目的となった。実験的によって測定される崩壊率はVusと前方極限での形状因子f_+(0)の積に比例し、f_+(0)を理論的に精密に知ること無しには高い精度でVusの値を決定することはできない。フレーバーSU(3)が厳密に成り立つ場合、f_+(0)=1となるが、ストレンジネスクォークがアップ・ダウンクォークよりやや重い現実の世界ではこの関係は成り立たない。カイラル摂動論によってフレーバーSU(3)の破れの効果がどのくらいあるか見積もることができるが、摂動の最低次を超えると模型の不定性なしに評価することができない。さらに近年崩壊率の実験精度が格段に上がり、Vusに対する実験誤差はf_+(0)の不定性によってもたらされる理論誤差を遥かに凌いだため、格子QCD数値解析を使った第一原理計算によるf_+、(0)の評価が切望されていた。そこで、今回3種類の動的クォークの自由度(アップ、ダウン、ストレンジ)を全て厳密に取り扱った2+1フレーバー格子QCD数値計算によりf_+(0)を高精度で評価する事に世界に先駆けて成功した。また、我々の結果と崩壊率に対する最新の実験結果を合わせて、Vusをこれまでになく高い精度で決定が可能となり、CKM行列のユニタリティ条件からのズレが約0.1%以下であることを示した。その結果、素粒子標準模型を超えるシナリオに対する一定の制限を与えた。
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Research Products
(3 results)