2008 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDによるストレンジネスを含むハドロン構造の研究
Project/Area Number |
19540265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (60332590)
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Keywords | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / ハドロン物理 / 核子構造 / 弱い相互作用 / フレーバー対称性の破れ |
Research Abstract |
核子の構造に関する格子QCD計算は近年着実に精度が上がりつつあるが、もっぱら核子の電磁形状因子や深非弾性散乱における核子構造関数に重きが置かれてきた。本研究においては弱い相互作用の軸性ベクトルカレントに伴う形状因子に焦点を当てた。軸性ベクトルカレントに伴う核子行列要素は、軸性ベクトルタイプの形状因子と擬スカラータイプの形状因子の2つの形状因子よって特徴づけらる。前者の零運動量極限は中性子ベータ崩壊定数に対応する。今回の研究においては、後者の擬スカラータイプの形状因子に着目した。擬スカラータイプの形状因子の零運動量近傍の値は、核子ミューオン吸収の実験で測られる核子擬スカラー電荷として知られ、その値については、仏国サクレー研究所で行われた実験(OMC)と加連邦トライアンフ研究所で行われた実験(RMC)での食い違いが長年の問題になっている。前者のOMCは後者のRMCの実験に比べ、実験の過程で2つの陽子とミューオンとの分子状態が作られやすく、そのことによる系統誤差が大きい事が指摘されている。しかし、RMCの実験値はカイラル摂動論などを使った理論的予想からは大きくはずれている。この理論を含む食い違いの問題に、強い相互作用の第一原理計算である格子QCDを用いて研究を行った。実際の格子QCD数値実験には、厳密に軸性ベクトル対称性を取り扱えるフェルミオン形式、ドメインウォールフェルミオンを用いた。また、これまで申請者らによって明らかにされてきた軸性ベクトルカレントに伴う核子行列要素に対する非常に大きな有限体積効果を制御することに留意し、非常に大きな物理体積による数値計算を遂行した。大きな物理体積の利点としては有限体積効果の問題から離れても、運動学的に零運動量の擬スカラータイプの形状因子は直接計算することができないので、零運動量近傍の有限な運動量(最も小さな運動量の自乗は0.1GeV2程度)を取り扱える点が挙げられる。我々の数値解析により、小さな運動量における擬スカラータイプの形状因子の振る舞いは、理論的に予想とされてきたパイオン極近似をよく満たしていることが確認され、最終的に核子ミューオン吸収の核子擬スカラー電荷としてカイラル摂動論による予言値に近い値を得た。我々の計算値は、最近スイスのPS1で行われた、MuCapcollaboratlonによる新しいOMCの実験値をよ
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Research Products
(4 results)
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[Presentation]2008
Author(s)
佐々木勝一
Organizer
日本物理学会2008年秋季大会
Place of Presentation
山形大学
Year and Date
2008-09-20