2008 Fiscal Year Annual Research Report
超高エネルギー原子核衝突の非平衡時空発展の理論的研究
Project/Area Number |
19540269
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 哲男 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00252528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 宏次 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Keywords | 相対論的原子核衝突 / クォーク・グルーオンプラズマ / カイラル相転移 / 非平衡の量子場 / HBT強度干渉法 |
Research Abstract |
研究代表者の松井が最終年度におこなった主な研究は、クォーク-グルーオンプラズマの高エネルギー原子核衝突の終状態での時空発展におけるカイラル相転移の非平衡過程の過程に関するもので、これまでの研究成果をまとめた。初年度に完成した松尾との第1論文(Nuclear Physics Aに掲載)では場の理論に基づく基本的定式化を行ったが、今年度は第2論文でカイラル対称性を0(N)模型で表現した有効理論を用いて、南部・ゴールドストーンモードの分散関係を計算し、集団運動励起が準粒子励起の連続スペクトルの中にどのように現れるか詳しく検討した結果をまとめた。(現在Nuclear Physics Aに投稿中)。また、この研究の発展として、新しい学生(大西)を指導して、この理論で膨張解を記述する研究を行い、大西はそれをもとに修士論文を作成した。もう一つ松井が行った研究は、「HBTパズル」とよばれる問題に関する研究で、2同種粒子の運動量相関から、HBT強度干渉計の原理を用いて得られる、粒子源の時空構造が流体模型などで理論的に計算される形状と一致しない理由を説明するために、凍結過程における終状態相互作用の効果がHBT干渉法に与えるこうかを学生(服部)と行った。その結果、平均場による1粒子振幅の位相変化によって、HBT強度干渉法で測った粒子源の見かけの形状が変化する、という興味ある結果を得ている。この結果は、京大基礎物理学研究所で開かれた国際会議のプロシーディングスでも報告したが、その後、密度行列の方法を用いて再定式化を行い、現在論文にまとめている。また、松井の指導する学生で、丹治は、強い電場中での荷電粒子の対生成に関する研究を行いAnnals of Physicsに投稿し、掲載が決まっている。 研究分担者の藤井の行った研究は、高エネルギー陽子原子核衝突の初期過程に関するもので、高密度のグルーオンの始状態相互作用について、カラーグラス凝縮模型とよばれる有効理論に基づいて、多重散乱や非線形効果に注目して板倉(KEK助教)、綴嶋(京大基研特任助教),岩崎(二松学舎教授)と共同研究を行った。これらの研究の成果は、Nuclear PhysicsA,Physical Review Cなどの専門誌に発表した。
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