2010 Fiscal Year Annual Research Report
APDを用いたシンチレーティングタイル・ファイバー型カロリメーターの試作
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19540278
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 拓生 福井大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30220651)
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Keywords | 素粒子実験 / カロリメーター |
Research Abstract |
本研究の中で既に製作した雛型電磁カロリメーターの受光素子としてAPDを用いた場合の性能評価を行った。既に一昨年度の研究で、現在一般的に用いられている光電子増倍管の代わりにAPDを用いることでエネルギー分解能が向上することが分かったので、今年度は、宇宙線μ粒子(MIP)がカロリメーターを貫通したときのエネルギー損失(dE)に対するエネルギー分解能を、APDのGainと温度の関数として測定し、最もエネルギー分解能が良くなるGainと温度の組み合わせを見出す実験を系統的に行った。その結果、APDのGainについては、どの温度領域でもGainが50~100のときにエネルギー分解能が最も良くなった。Gainが50以下では信号が小さくなるため、プリアンプから発生するノイズなどの影響を大きく受け、エネルギー分解能が低下する。一方、Gainが100を越えて大きくなると、信号も大きくなるが、それを上回る勢いでAPDの過剰雑音係数も大きくなり、エネルギー分解能が悪化することが分かった。さらに、APDのGainを50~100に保った状態でAPDの温度を室温(+25℃)から-30℃まで下げていくと、APDの暗電流によるショットノイズが低減されるので、その分だけエネルギー分解能が向上するが、室温で28%だった分解能が、-30℃でせいぜい26%に向上する程度であった。結論として、光電子増倍管を使えば33%であったエネルギー分解能を、室温中でAPDを用いることによって28%まで、さらに、そのAPDを-30℃まで冷却することによって26%まで向上させることができた。なお、シミュレーションによって求めたMIPのエネルギー損失のバラツキのみから得られるエネルギー分解能の極限値は25%であったので、APDを-30℃に冷却したときの26%という分解能は、ほぼこの極限値を実現しているものと考えられる。
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Research Products
(5 results)