2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540287
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅沼 秀夫 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (10291452)
|
Keywords | 量子色力学 / クォーク / グルーオン / カラーの閉じ込み / 格子ゲージ理論 / 超弦理論 / エキゾチック・ハドロン / クォーク・グルーオン・プラズマ |
Research Abstract |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基いて、一連の独自性の高い研究を行った。(1)格子QCDにおいて、適当なゲージの下で、グルーオン場をフーリエ変換し、その運動量成分の寄与を解析することにより、QCD現象に対して"重要なグルーオン運動量成分"を特定する一般的な方法を開発した。(2)ランダウ・ゲージでの格子QCDの解析により、"クォーク閉じ込め力の起源"が、グルーオンの1.5GeV以下の運動量成分にある事を世界で初めて示した。(3)超弦理論のDブレインで構成されるホログラフィックQCDを用いて、バリオンとバリオン物質を世界で初めて定量的に研究し、高密度QCDの相転移が、この枠組みでは、"バリオン密度の非局在化"として起きる事を示した。(4)2つの重いクォークと1つの軽いクォークからなる系に対するポテンシャルを世界で初めて格子QCDと解析的な模型計算の双方において明らかにし、バリオン中での2クォーク間の有効閉じ込め力が、もう1つのバレンス・クォークの動的な効果により減少する事を示した。(5)格子QCDを用いて、ダイクォークを理想化した軽いスカラークォーク及び、それとクォークの束縛状態である「キメラ・ハドロン」の性質を調べた。(6)非等方格子QCDを用いて、QGPのシグナルとしても重要な"有限温度でのチャーモニウム"に対する研究を行い、臨界温度以上でもJ/Ψなどが"空間的に局在した状態"として生き残る事を示した。(7)詳細な格子QCD研究により、核子などの3クォーク系、及び、クォーク多体系におけるクォーク間ポテンシャルが"1グルーオン交換のクーロン・ポテンシャル"と"Y型ジャンクションを伴う線形の閉じ込めポテンシャル"の和で表され、クォーク多体系においても長距離領域では"ストリング描像"が成立する事を世界で初めて明らかにした。尚、この研究は、格子QCDの教科書の1節として取り上げられている。
|
Research Products
(14 results)