2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540287
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅沼 秀夫 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10291452)
|
Keywords | 量子色力学 / クォーク / グルーオン / 格子ゲージ理論 / カラーの閉じ込め / 対生成 / エキゾチック・ハドロン / クォーク・グルーオン・プラズマ |
Research Abstract |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基いて、以下の独自性の高い研究を行った。 (1)QCDにおける代表的なゲージであるランダウゲージとクーロンゲージを、実パラメータλで連続的に結びつける「一般化ランダウゲージ(λゲージ)」を定式化し、クォーク間の「瞬間ポテンシャル」等に対する詳細な格子QCD研究を行った。瞬間閉じ込め力は、ランダウゲージ近傍ではゼロであり、クーロンゲージ近傍では、静的な閉じ込め力の2倍以上になり、それらの間では連続的に変化する事等を示した。(2)クォーク模型を記述するQCDのゲージの候補として「λ_cゲージ」を提案した。このゲージでは、クォーク同士が瞬間的に物理的ポテンシャルで作用しあい、クォーク模型と類似の状況になること等を指摘した。(3)一定の強い(カラー)電場と(カラー)磁場が共存する系では、質量がゼロのフェルミオンの単位時空での対生成率が無限大になり、真空が必ず崩壊することを指摘した。強磁場中では最低ランダウ準位の寄与が主要であり、この発散もその寄与だけで説明できることを示した。更に、強磁場での有効理論を定式化し、それが2次元低い低次元系の理論になる事、及び対生成率の発散の起源がアノマリーにある等を示した.(4)クォークの閉じ込めやカイラル対称性の破れに対する「重要なグルーオン運動量」の研究を格子QCDを用いて行い、グルーオンの1.5GeV以下の運動量成分が閉じ込め力をもたらすこと等を定量的に示した。(5)格子QCDを用いたランダウゲージでのグルーオン伝播関数の詳細な解析により、4次元ユークリッド座標空間でのグルーオン伝播関数が00.1~1fmでは、4次元の湯川タイプの伝播関数で表される事を見出した。これに基づき、グルーオンのスペクトル関数の解析的な関数形を導出し"∞の留数を持つ正の極"と"負値の領域"を持つ異常なものである事を指摘した。
|