2008 Fiscal Year Annual Research Report
TeVスケール弦模型の構成と電弱対称性の自発的破れ
Project/Area Number |
19540303
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北澤 敬章 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 助教 (20271158)
|
Keywords | 素粒子 / 電弱対称性 / 弦理論 |
Research Abstract |
超対称性のない弦理論に基づいた素粒子模型においては、電弱対称性の破れが弦の量子補正によって起こる可能性がある。例えば、ヒッグス場を質量のない場として導入した場合、その質量の2乗に対する弦の量子補正が負になれば、電弱対称性の自発的破れが自然かつ必然的に起きることになる。しかし、超対称性のない弦模型における量子補正の計算には、いわゆる「NS-NSタドポール問題」がつきまとう。それは、一般に「NS-NSタドポール」というものが相殺されずに残るために、量子補正が発散してしまうという問題である。 昨年度、研究代表者はこの問題を回避する手続きとして「tadpole resummation」と呼ばれる手法を弦理論において導入した。その際、真空のエネルギーへの弦の量子補正のみを対象としていて、ヒッグス場などのスカラー場の質量への弦の量子補正への応用にはさらに定式化を工夫する必要があった。具体的には、閉じた弦とDブレーンとの結合を表現するために導入される「boundary state」に工夫を加えて、Dブレーンの上に背景スカラー場が存在する場合に拡張された「boundary state」を構成する必要があった。ひとつのDブレーン上にスカラー場を実現する方法は2つある(その起源が余剰次元方向のゲージ場か、またはDブレーンの余剰次元内での位置を表す場)が、それぞれの場合にこれを実際に構成し、スカラー場のポテンシャル(質量を含む)に対する弦の輻射補正を、NS-NSタドポール問題を回避して計算する処方を提案した。 この結果を踏まえてTeVスケール弦模型の構成を試みたが、まだ結果が出ていない。
|