2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540316
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
磯 暁 High Energy Accelerator Research Organization, 素粒子原子核研究所, 准教授 (20242092)
|
Keywords | ブラックホール / ホーキング輻射 / ウンルー効果 / 量子異常 |
Research Abstract |
この研究の主要な目的は、ブラックホール熱力学、特にホーキング輻射やブラックホールのエントロピーなどの性質を、超弦理論や行列模型といったミクロな観点、および量子異常などのマクロな観点の双方から理解して、時空の微視的構造と巨視的構造を理解する事にある。これまでの研究で、ブラックホールのホライズン近傍の振る舞いを、重力アノマリーとその拡張で普遍的に議論できることを明らかにした。平成21年度は、ミクロな側面からの解析を進めた。特に超重力理論の正則解であるファズボール解に対して、そのメトリックの粗視化を行い、そこからブラックホール時空を記述するメトリックが再現されるかを調べた。その結果、メトリックそのものを粗視化してもホライズンのない解しか得られないことがわかった。このため、現在は、メトリックそのものではなくファズボール解に対する物理量とブラックホールでの対応する物理量の関係を調べている。特に応答関数がどのように対応するのかを解析している。またブラックホールからのホーキング輻射と等価原理で関係しているウンルー効果についても解析を行った。一様加速度運動する荷電粒子の運動は、ウンルー効果の影響で縦方向に揺らぐ。この揺らぎ運動を記述する確率微分方程式を導き、その解を求めることで、縦方向の運動が(ウンルー温度に相当する)揺動散逸定理を満たすことを証明した。現在、その揺らぎ運動から古典的なラーマー輻射以外の付加的な輻射が発生するかどうかを解析している。この解析は、ヨーロッパで建設中の超高強度レーザにおけるウンルー効果の検証と関係しとても重要な問題である。
|