2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540340
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 聡 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 准教授 (80212009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (70091163)
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Keywords | 電荷秩序状態 / 光誘起相転移 / ダイナミックス / 光吸収スペクトル / 低次元強相関電子系 |
Research Abstract |
「研究計画」で述べたように、2茨元電荷秩序状態の光励起による破壊がなぜ極めて高い収率で起きるのか、なぜ超高速で起きるのか、を解明し、この知見を基に、幾何学的フラストレーションや電荷揺らぎなどの電荷秩序状態の興味深い性質の理解を進めることを目的とし、2次元電荷秩序状態の光励起による破壊のダイナミックスの理論研究に取り組んだ。本年度は、破壊や光誘起相転移の核となる光励起状態の性質を調べた。異方的な2次元三角格子上のtight-bindingハミルトニアンにクーロン相互作用項を加えたモデルを用い、クーロンパラメーターおよび格子歪みに依存して、光吸収スペクトル、基底状態および光吸収スペクトルに主要な寄与をするエネルギー固有状態、がどのように変化するかを調べた。このモデルにおいては、電荷秩序状態だけではなく、金属状態、強磁性金属状態、ストライプ上のCDW状態など、多様な状態が基底状態となり得ることがわかった。(BEDT-TTF)_2Xのθd相に適当なパラメーターを用いた場合、光吸収スペクトルの低エネルギー側では、電荷秩序状態からストライプ上のCDW状態への遷移による鋭いピーク、高エネルギー側には通常の金属状態への遷移によるブロードなピークが支配的あることがわかった。このことは、従来考えられてきたように光誘起相転移の核としてホールがひとつ動いた状態を考察することは適当ではなく、微小な金属領域が直接光励起によってつくられることを示唆しており、この系の光誘起相転移に新しい知見をもたらすものである。「研究計画」では、光励起後のダイナミックスについても調べる予定であったが、ダイナミックスの研究はまだまとまっていない。
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