2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドット複合系における近藤効果とスピン制御の基礎
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19540345
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
江藤 幹雄 Keio University, 理工学部, 准教授 (00221812)
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Keywords | 量子ドット / 近藤効果 / スピンエレクトロニクス / メゾスコピック系 / 物性理論 / スピン軌道相互作用 / 量子情報処理 / 量子輸送現象 |
Research Abstract |
(1)量子ドット複合系の近藤効果の研究として、並列結合量子ドットにおけるSU(4)近藤効果を詳細に調べた。スケーリング法、および数値繰り込み群(NRG)を用いて以下のことを明らかにした。(i)電気伝導度Gの温度依存性を計算した。量子ドットごとにリードとのトンネル結合が異なる一般の場合であっても、GはSU(4)近藤効果の強結合固定点によって決定するユニバーサルな振舞いを示す。(ii)近藤温度Tkを量子ドット間の準位間隔Δの関数として求めた。TkはΔのべき乗則の依存性を示すが、その指数にSU(4)近藤効果の固定点がマージナルであることが反映される。(iii)量子ドットごとを流れる電気伝導度Giを計算した(G=G_1+G_2)。G_iは必ずしもユニバーサルな振舞いを示さない。この結果は最近のHuebelらの実験で観測可能である。(II)ABリングに埋め込まれた量子ドットにおけるファノ近藤効果に対して新しい定式化を試みた。量子ドットを除いたABリングとリード中の電子状態にユニタリー変換をおこなうことで、量子ドットに結合するモードと結合しないモードに分離することが可能である。この操作によってファノ近藤効果の厳密解を得る可能性があるが、現在その研究を進めている。また、この方法はスピン軌道相互作用がある量子ドットでの近藤効果の問題にも適用可能である。(III)量子ドット複合系におけるスピン制御の基礎の確立のため、現実的な量子ドットのモデル化、および電子状態、電気伝導度の数値計算の方法を構築した。量子ドット、トンネル障壁、リードの系全体をtight-binding modelによって表し、電子間相互作用を自己無撞着に取り入れて電気伝導度を求める。この方法によってクーロン振動と位相差の振る舞い(位相の急峻な飛び、phase lapseの出現)を計算し、実験結果の説明に成功した。さらに外部磁場によってphase lapseが見られなくなることを示した。
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