2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドット複合系における近藤効果とスピン制御の基礎
Project/Area Number |
19540345
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
江藤 幹雄 Keio University, 理工学部, 教授 (00221812)
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Keywords | 量子ドット / 近藤効果 / スポン軌道相互作用 / フピンホール効果 / アハロノフ・ボーム効果 / スピンバルブ / トンネル磁気抵抗 / スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
量子ドット複合系における近藤効果、および半導体ナノ構造におけるスピン制御の理論研究を多角的に進めた。 1.アハロノフ・ボームリングに埋め込まれた量子ドットにおける近藤効果に対してスケーリング解析をおこない、近藤温度および電気伝導度の解析的な表式を導出した。昨年度開発した方法をリングサイズが有限の場合に拡張し、リングサイズと近藤雲の広がりの大小関係によって近藤温度の磁束依存性が定性的に異なることを示した。 2.狭ギャップ半導体ヘテロ構造において、アンチドット等で作られる人工ポテンシャルによるスピンホール効果を定式化した。共鳴散乱によってスピンホール効果が著しく増大することを示した(J.Phys.Soc.Jpn.誌レターセクション掲載)。アンチドットを含む多端子デバイスを数値的に調べ、50%以上の高効率スピンフィルターを提案した(Phys.Rev.B誌掲載)。また、量子ドットに多端子を接続した系においてスピン軌道相互作用を取り入れ、共鳴トンネルによってスピンホール効果が増大する現象を見出した。 3.量子ドットを2つの強磁性体で挟んだ系、量子ドットスピンバルブ、は大きなトンネル磁気抵抗効果を示すことからスピンエレクトロニクスへの応用が注目されている。この系のクーロンブロッケード領域における高次のトンネル過程(コトンネリング伝導)を調べた。トンネル結合の非対称性が大きいとき、スピン反転過程の電気伝導への寄与が増大し、実験で報告されていた負の磁気抵抗の原因となることを指摘した。 4.量子ドットを側面に結合させた量子細線ではファノ効果によるアンチ共鳴が観測される。この系の強磁場下における近藤効果をスレーブボソン平均場近似によって計算した。近藤効果によって生じるフェルミ準位でのアンチ共鳴が、カイラリティーのあるエッジ状態の形成によって縮小する機構を明らかにした。
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