2007 Fiscal Year Annual Research Report
無機有機複合量子井戸における井戸間光結合と光非線形性
Project/Area Number |
19540346
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
欅田 英之 Sophia University, 理工学部, 助教 (50296886)
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Keywords | 光物性 / 量子井戸 / ポラリトン |
Research Abstract |
ハロゲン化鉛無機有機量子井戸物質では、半導体i井戸層と極めてバンドギャップの大きい有機バリア層が自己組織的に交互に積み重なる。そのため理想的な二次元構造を示し、励起子は井戸の中に強く閉じ込められる。井戸層問の電子的な結合は完全に切り離されていることから、これまでこの物質では単結晶においてさえも単一の井戸とみなして光物性の研究がなされてきた。しかしもし、光を介した井戸間分極のコヒーレントな結合があれば、井戸層数と等しい数のモードが生じるはずである。そしてそれらのモードのうち、強く光と結合するモードのみに振動子強度の集中が起こり、光結合した多重量子井戸ならではの光学的性質を示すと考えられる。そこで本研究ではこの無機有機量子井戸物質を用い、井戸層問の光結合が光学特性に与える影響を詳細に調べている。本年度に行った研究により、無機有機量子井戸物質中では 1.多重量子井戸に閉じ込められた二次元励起子であるにもかかわらず、ポラリトンの励起波長依存性や発光緩和過程は、三次元的なふるまいを示す。 2.その一方で、二次元的性質に由来すると考えられる特異な励起子反射スペクトルが得られている。という現象が見られた。 これらの結果は、本研究で扱っている物質が三次元物質と「光結合の強い」多重二次元物質との本質的な違いを明らかにする手掛かりとなりうることを示唆しており、局所場と非局所場が物質系の誘電率に与える寄与の解明につながる可能性がある。
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