2007 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーション系の強磁場ESRによるスピンJahn-Teller効果の解明
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19540367
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大久保 晋 Kobe University, 自然科学研究系先端融合研究環分子フォトサイエンス研究センター, 助教 (80283901)
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Keywords | スピンフラストレーション / パイロクロア格子 / 強磁場ESR |
Research Abstract |
今年度は、パイロクロア格子を持つCrスピネル化合物CdCr_2O_4の単結晶試料による強磁場ESRによって、強磁場中におけるスピン配置を明らかにする計画であったが、CdCr_2O_4の純良単結晶試料の入手が現在のところ困難なため、申請書の「計画通りに進まないときの対応」に従い、より広範囲な物質探索を行った。その結果、パイロクロア格子フラストレーション物質であるCu_4(OH)_6Cl_2の天然鉱物の微小単結晶試料と合成粉末試料を入手して、それらの強磁場ESRを遂行した。天然鉱物の微小単結晶試料1本を用いたSQUID磁束計による高感度磁化測定によって、T_N=9.5K以下では磁場H_C=3.5Tにスピンフロップ転移があることが明らかになった。強磁場ESR測定では感度の利得のため微小単結晶試料を1000本程度並べて測定を行った。80K以上の常磁性領域ではg=2.2付近に吸収線幅2Tと極めて広い吸収が観測された。フラストレーション系のESRでは、このような線幅の広い吸収がよく観測されており、フラストレーションの効果で緩和が速いために線幅が広がっているものと考えられる。低温になるに従い、吸収線幅がより広がるため低温における共鳴を同定することは今のところ困難である。一方、合成粉末試料ならびにその磁場中配向試料による測定では試料を増量することができ、低温1.8Kにおいても共鳴を観測することが出来た。1.8Kにおける強磁場ESR測定からESRモードは典型的な反強磁性共鳴に類似しているものの、共鳴線幅が広く通常の反強磁性共鳴とは異なることを得た。これはフラストレーションの効果によって、スピンの揺らぎが残っている可能性を示唆している。この系では、合成の出発物質を変えることによりCr系の物質が合成できることが知られており、Cr系へと発展させると共にCdCr_2O_4の純良単結晶試料の入手を行う。
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Research Products
(2 results)