2009 Fiscal Year Annual Research Report
磁束渦糸状態の定量的物性評価理論の確立と内部自由度をもつ超伝導への展開
Project/Area Number |
19540369
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
市岡 優典 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (90304295)
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Keywords | 物性理論 / 非従来型超伝導 / 超伝導渦糸状態 / 超伝導異方性 / 磁束格子 / 中性子小角散乱 / パウリ常磁性 / 重い電子系超伝導 |
Research Abstract |
超伝導磁束渦糸状態の空間構造を微視的理論により正確に計算し、比熱や帯磁率の他、熱伝導や中性子散乱強度、NMRスペクトルなど各種物理量の磁場依存性・温度依存性を定量的に正しく評価する計算手法の開発をおこなった。これにより、非従来型超伝導体の物理量の振舞を解析し、実験データに隠れている超伝導機構についての重要な情報を評価することが可能となった。特に、CeCoIn_5など非従来型超伝導体でパウリ効果が強い超伝導体に特徴的な磁場中物性について理論計算と、中性子散乱強度や磁束格子変形・比熱・磁化などの実験データとの比較・検討を行い、この系の特異な性質を明らかにした。また、より正確な定量的評価を行なうための新たな展開として、第一原理計算で得られるフェルミ面構造を考慮しての、磁場中超伝導の物性の定量的評価の方法を確立し解析を進めていく手法の開発を進めている。これと同時に不純物効果を考慮した磁場中物性の理論評価の手法も開発中である。 また、超伝導秩序変数のスピン自由度まで完全に考慮した形の磁束渦糸状態の計算手法を用いて、スピン三重項超伝導のベクトル秩序変数(dベクトル)の場合における特異な磁束渦糸状態について理論研究を進めた。ルテニウム酸化物超伝導体Sr_2RuO_4などに取り組む前に、まずは等方的で典型的なスピン三重項超伝導である超流動ヘリウム3での渦状態について、微視的理論による渦状態の計算手法を確立しすることを目指し研究を進め、超流動ヘリウム3での、多成分が絡み合った渦での超伝導秩序変数の空間構造や準粒子構造などについて新たな知見を得た。現在、これらの成果をまとめ、論文の準備中である。
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