2008 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素を含む新異方的超伝導体の複合トンネル分光システムによる電子状態の解明
Project/Area Number |
19540370
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浴野 稔一 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (40185103)
|
Keywords | 軽元素系超伝導 / 走査トンネル顕微鏡(STM) / 走査トンネル分光(STS) / 超伝導ギャップ / 層状高温超伝導体 / 擬ギャップ / 電荷密度波 |
Research Abstract |
層状窒化物超伝導体FeOCl型α-KxTiNCl(Tc=16K)およびSmSI型β-HfNCl_<0.7>(Tc=24K)の特徴を比較するために走査トンネル顕微鏡(STM)/分光(STS)による研究を行った。以下に得られた結果の概略を述べる。 α-KxTiNClでは、高い局所仕事関数(3.5eV)を反映した鮮明なTi原子像から格子定数a=0.406nm、b=0.329nmが求まった。STSによる超伝導ギャップ測定では、範囲5nmx5nmで2△=6〜60meVの幅広い分布が観測された。この顕著なナノスケール不均一性の存在はBi系高温超伝導体の場合と似ている。得られたギャップ比は2△/k_BTc=4〜40であり、その最小値はBCS値程度であるが最大値は異常に大きい。 β-HfNCl_<0.7>に関しても、鮮明なa=0.369nmの三角格子型のHf原子配列像を得ている。STS測定では、少なくとも10nmx10nmの範囲において、比較的均一なトンネルコンダクタンスの分布とほぼ一定のギャップ値2△=20meVを得た。この均質性はa-KxTiNClの場合と対照的である。これらの違いが本質的なものか否かは定かではないが、β型の面内三角格子がα型の矩形格子に比べて電子状態の不均一性を抑制している可能性も考えられる。なお、とのギャップ値はbreak junctionで観測される最大値と良い一致を示す。ギャップ比2△/k_BTcは10程度である。 以上から、α-KxTiNClとβ-HfNCl_<0.7>の超伝導ナノスケール電子状態の特徴がある程度明らかになった。特に両者の電子状態の均一度に顕著な違いを見い出したが、これが層状ネットワーク構造の違いによるのか否かを明らかにするために、引き続き研究を遂行している。
|