2009 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素を含む新異方的超伝導体の複合トンネル分光システムによる電子状態の解明
Project/Area Number |
19540370
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浴野 稔一 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (40185103)
|
Keywords | 軽元素系超伝導 / 走査トンネル顕微鏡(STM) / 走査トンネル分光(STS) / 超伝導ギャップ / 層状高温超伝導体 / 擬ギャップ / 電荷密度波 |
Research Abstract |
低温超高真空走査型トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)により、軽元素系層状超伝導体FeOCl(α)型K_xTiNClとSmSI(β)型HfNCl_0.7、 ZrNCl_0.7の表面原子配列およびナノスケール電子状態に関する研究を行った。α-K_xTiNClでは鮮明な矩形のTi原子配列像が得られ、β-HfiNCl_0.7およβ-ZrNCl_0.7においては、それぞれHf原子とZr原子を反映した鮮明な三角格子型の原子配列像を観測した。これにより、α型結晶構造とβ型結晶構造の面内原子配列の違いを実空間で直接明らかにした。電子状態に関しては、α-K_xTiNClにおいて、結晶表面上20~30nm^2程度の狭い領域で超伝導エネルギーギャップ(2Δ)の極めて広い分布を見いだした。超伝導転移温度Tcで規格化したギャップ2Δ/kBT_c(kB:ボルツマン定数)は4~40であり、最大値はBCS理論値(=3.5)の10倍以上であることを明らかにした。β-HfNCl_0.7においては、少なくとも100nm^2の領域で電子状態は均質であり2Δ/kBT_c~10となった。これは銅酸化物高温超伝導体と同程度である。Tcがβ-HfNCl_0.7の24Kよりも10K低いβ-ZrNCl_0.7でもβ-HfNCl_0.7とほぼ同じギャップ値を持つという事実を明らかにした。α型とβ型の電子状態の顕著な違いの原因として、α型では不規則なK原子分布や擬一次元的結晶構造による不均一な電子状態の形成が考えられ、β型では、面内で三角格子構造を持つことから、比較的均質な電子状態が実現されている可能性が挙げられる。またこれら層状窒化物超伝導体の2Δ/kBT_cの大きさがBCS理論値の約3倍以上という特徴は、電子対の結合が非常に強く超伝導機構が従来のものとは異なることを明確に示している。
|
Research Products
(16 results)