2009 Fiscal Year Annual Research Report
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19540381
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
米満 賢治 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (60270823)
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Keywords | 有機導体 / 電荷秩序 / 光誘起相転移 / 絶縁体金属転移 / クーロン相互作用 / 電子格子相互作用 / フラストレーション / コヒーレント振動 |
Research Abstract |
2次元1/4フィリングの有機導体で互いにとても似た水平型電荷秩序をもつα型およびθ型の(BEDT-TTF)_2Xでは、光誘起ダイナミクスが大きく異なることが実験で観測され、20年度まで平衡状態近くを中心に2次元異方的三角格子上の拡張パイエルス・ハバード模型に基づき理論研究を進めてきた。21年度は時間依存シュレディンガー方程式を平均場近似の波動関数や電子相関をフルに取り入れた厳密な多電子波動関数に対して解いて、光誘起ダイナミクスを系統的に調べた。金属化しやすいα型塩は、高温金属相ですでに電荷不均化が起きている。それは低対称な結晶構造がもつトランスファー積分配置によるもので、運動エネルギー由来であり、相互作用由来でない。低温における格子歪みはさらなる電荷不均化を生むが、局所的な現象である。光を局所的に照射するだけで解消し全体に波及する。金属化しにくいθ型塩は、高温金属相でみられる高対称な結晶構造では、異なる秩序がせめぎ合うフラストレートした状態に近い。低温で分子面の回転に伴って電荷ストライプ全体が強く安定化する。そのため、光励起されたストライプだけが融けて全体に広がらない。全体的に光照射しても、ダイナミクスに顕著な違いが現れる。それは格子歪みが弱まった瞬間にθ型塩でのみフラストレーション由来の擬縮退した励起状態が関与するためで、α型塩に比べて電荷振動はインコヒーレントになる。
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