2007 Fiscal Year Annual Research Report
質量ゼロのディラック粒子をもつ有機ゼロギャップ半導体の電流磁気効果
Project/Area Number |
19540387
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田嶋 尚也 The Institute of Physical and Chemical Research, 加藤分子物性研究室, 研究員 (40316930)
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Keywords | 有機導体 / Dirac電子 / zero-mode Landau準位 / 層間磁気抵抗 |
Research Abstract |
我々は高圧下にあるα-(BEDT-TTF)_2I_3でバルクのDirac電子系を見出してきた。 この系で興味深いのは、面垂直に磁場が加わるとDirac coneはLandau準位に量子化されるが、contact pointを周回する軌道がBerry位相πを持つため、必ずcontact pointの位置にゼロモードと呼ばれているN=0のLandau準位が現れることである。Landau準位の縮重度は磁場に比例して増大するので、contact pointにおける状態密度はゼロから磁場に比例して増大する。 本研究では、低磁場でもゼロモードLandau準位が支配的となる十分低温で層間磁気抵抗を調べた。以下がその実験結果である。(1)垂直磁場下では、ゼロモードLandau準位の縮重度の増大を反映して、層間抵抗は磁場に反比例して減少する負の磁気抵抗を示す。(2)磁場方位を傾けると、層間抵抗は単調に増大し2次元面に平行な磁場方位で鋭いピークを示す。 この結果は、量子極限における層間伝導度をトンネル描像で計算した長田の結果と定量的によく一致している。従って、この層間磁気抵抗の振る舞いはα-(BEDT-TTF)_2I_3においてDirac電子系が実現したことを強く示唆する。 さらに、ゼロモードを考慮すると今まで未解決であった面内の磁気抵抗やホール抵抗の振る舞いを良く理解できる。ゼロモードLandau準位の縮重度の増大を反映して磁場依存性は小さく、ホール角が広い磁場・温度域において〜45°であること、キャリア易動度は磁場に逆比例して減少することなど、ゼロモードLandau準位上にあるキャリアの高磁場下特徴として説明できる。また、ホール抵抗は低磁場からプラトーであるが、低温では低磁場でもゼロモードLandau準位が支配的となるためである。
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