2008 Fiscal Year Annual Research Report
質量ゼロのディラック粒子をもつ有機ゼロギャップ半導体の電流磁気効果
Project/Area Number |
19540387
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田嶋 尚也 The Institute of Physical and Chemical Research, 加藤分子物性研究室, 専任研究員 (40316930)
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Keywords | 有機導体 / Dirac電子 / zero-mode Landau準位 / 層間磁気抵抗 / スピン分裂 |
Research Abstract |
我々は高圧下にあるα-(BEDT-TTF)_2I_3とその類縁物質でバルクのDirac電子系を見出してきた。 この系で興味深いのは、面垂直に磁場が加わるとDirac coneはLandau準位に量子化されるが、contact pointを周回する軌道がBerry位相πを持つため、必ずcontact pointの位置にゼロモードと呼ばれているn=0のLandau準位が現れることである。Landau準位の縮重度は磁場に比例して増大するので、contact pointにおける状態密度はゼロから磁場に比例して増大する。 昨年度は、低磁場でもゼロモードが支配的となる十分低温で層間磁気抵抗を調べ、ゼロモードの縮重度の増大を反映して、層間抵抗は磁場に反比例して減少する負の磁気抵抗を示すことを見出した。この結果は、量子極限における層間伝導度をトンネル描像で計算した長田の結果と定量的によく一致している。従って、この層間磁気抵抗の振る舞いはα-(BEDT-TTF)_2I_3においてDirac電子系が実現したことを強く示唆する。 今年度前半は、測定温度域を0.06Kまで広げ、高磁場・極低温でゼロモード電子の振る舞いを調べた。高磁場・低温で負の層間磁気抵抗は正へと変わることが判明した。面白いことに、磁場をB、温度をTとしたときに正の層間磁気抵抗はexp(μ_BB/K_BT)に従うのである。この結果は、ゼロモードが高磁場でスピン分裂することを強く示唆する。 また、今年度後半では測定対象物質をα-(BETS)_2I_3、α-(BEDT-STF)_2I_3、θ-(BEDT-TTF)_2I_3まで広げた。低温でゼロモードによる負の層間磁気抵抗、またそのスピン分裂による正の磁気抵抗をそれぞれの物質で観測し、α-(BEDT-TTF)_2I_3以外にバルクのDirac電子系であることを明らかにした。
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