2007 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学によるイオン伝導性ガラスの動的不均一構造の解析
Project/Area Number |
19540396
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
巾崎 潤子 Tokyo Institute of Technology, 総合理工学研究科, 助教 (10133331)
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Keywords | ガラス / イオン伝導性 / 動的不均一性 / 分子動力学 / アルカリケイ酸塩 / マルチフラクタル |
Research Abstract |
イオン伝導性のガラス中で、イオンは直線的な速い運動による拡散と局在化した遅い運動の混ざった複雑な挙動をする。分子動力学(MD)シミュレーションを用いると、この複雑な動的不均一運動をミクロスコピックに解析できる。種々の組成のアルカリケイ酸塩ガラスとその混合系を中心に、大規模なMDを行って動的構造形成について検討したところ、イオンの運動の軌跡のランダムウォークのフラクタル次元の解析、イオンの空間分布のマルチフラクタル解析などでイオンの運動の幾何学的な特徴をうまく取り出すことに成功した。ランダムウォークのフラクタル次元d_wは、平均二乗変位のべき的な挙動の指数θと結び付けられるので、混合アルカリガラスで見られる非線形な輸送係数の減少をフラクタル次元の変化として定量的に捉えることができた。また、イオンの運動には、ジャンプ運動の待ち時間に関係する時間項と、ジャンプ間の幾何学的相関による空間項の寄与があるがこれを分離することができた。更に、イオンの運動ベクトルの時系列の主成分解析によってイオンの協調運動を解析し、これが偶然起きているのではなく、決定論的な性格の運動であることを明らかにした。動的に形成される複雑な構造は、この速い運動と遅い運動の階層構造から形成され、マルチフラクタル性を示す。この特徴は、f(α)スペクトルでよく捉えることができ、混合アルカリ系におけるダイナミクスの組成依存性などが普遍的な方法で表現できた。
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