2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学によるイオン伝導性ガラスの動的不均一構造の解析
Project/Area Number |
19540396
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
巾崎 潤子 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科(研究院), 助教 (10133331)
|
Keywords | ガラス / イオン伝導性 / 動的不均一性 / 分子動力学 / アルカリケイ酸塩 / フラクタル次元 / イオン液体 / レビイ分布 |
Research Abstract |
イオン伝導性のガラス中で、イオンは長い有効ジャンプ長の運動による拡散と局在化した遅い運動が混ざった複雑な挙動をする。分子動力学(MD)シミュレーションを用いると、この複雑な動的不均一性をミクロスコピックに解析できる。本年度はイオン性とガラス形成性の両方の性質を兼ね備えたイオン液体(EMIM-NO_3)の拡散挙動を詳細に調べ、動的構造形成について検討した。このイオン液体では、陽イオンと陰イオンの強くカップリングした運動が見られた。また、アルカリケイ酸塩ガラスと類似の速い拡散があり、長時間にわたる粒子運動の幾何学的相関があることが明らかになった。イオン液体は、いわゆるフラジイティの強い液体で、ガラス転移点近傍で大きなダイナミクスの変化を示す。この非アレニウス的なダイナミクスの温度依存性について詳細な検討を行った結果、長距離の運動から短距離の運動への移行が起きていることが、イオンの軌跡のランダムウォークのフラクタル次元の解析に基づいて結論付けられた。さらに時空相関関数の自己部分がイオン伝導性ガラスと類似のレビイ型の分布を示すことを見出し、ダイナミクスを特徴付けた。これらの結果はイオン伝導機構およびガラス転移の理解に貢献する。
|