2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学によるイオン伝導性ガラスの動的不均一構造の解析
Project/Area Number |
19540396
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
巾崎 潤子 Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (10133331)
|
Keywords | ガラス / イオン伝導性 / 動的不均一性 / 分子動力学 / アルカリケイ酸塩 / マルチフラクタル |
Research Abstract |
分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、ガラス転移点近傍や、イオン伝導性ガラス中に見られる動的に不均一なダイナミクスと、それによって作られる構造の特徴を調べ、自己組織化の機構を明らかにした。イオン伝導性のガラス中で、イオンは直線的な速い運動による拡散と局在化した遅い運動の混在した複雑な挙動をする。分子動力学(MD)シミュレーションを用いると、この複雑な動的不均一運動を原子レベルで解析できる。本年度はこの研究をイオン液体にも発展させ、さらに、ガラス中とイオン液体の挙動の違いが、動的不均一性とどのような関係にあるかを明らかにした。また、このような運動の普遍性を明らかにするために、一般化した二元系レナード・ジョーンズ(LJ)系も解析した。フラクタル次元解析を用いると、このようなダイナミクスとそれから得られる構造の普遍性を統一的に表現することができる。特に、動的に不均一な構造が"べき"の指数の異なった運動の混合(マルチフラクタルウォーク)により形成されていることを、時系列のマルチフラクタル解析により初めて証明した。これによって、平均二乗変位や中間散乱関数の時間発展をうまく説明できた。空間項がこれらの関数の関数形に直接影響しているのに対して、時間項(ジャンプ運動の待ち時間分布)平均値を通してダイナミクスに寄与する。これらを総合することで、時空のフラクタル性の、ガラス転移に伴うダイナミクスの遅延化や構造形成における役割が明確になった。これらの知見は、ナノスケールの構造デザインや、ダイナミクスの制御に関する重要な基礎となる。
|