2009 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス転移を統一的に理解する自由エネルギーランドスケープ理論の研究
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19540405
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田垣 孝 Tokyo Denki University, 理工学部, 教授 (90214147)
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Keywords | 非平衡統計力学 / 自由エネルギーランドスケープ / ランジュバン方程式 / α緩和・β緩和 / ガラス転移 / 比熱・エントロピー / 初到達時間分布 / 複雑ネットワーク |
Research Abstract |
1.通常の平衡統計力学を、与えられた原子配置の関数に対する部分分配関数と、それをすべての配置について積分して求められる全分配関数を用いて、厳密に再定式化した。部分分配関数から決まる自由エネルギーは、原子配置の関数であり、自由エネルギーランドスケープとよぶことができる。任意の物理量とその温度微分と自由エネルギーランドスケープの関係を明らかにし、自由エネルギーランドスケープの構造に揺らぎがある場合、その効果がその揺らぎと物理量の揺らぎの相関で表されることを厳密に示した。 2.系の時間発展が、自由エネルギーランドスケープ上の代表点の運動で記述できることを示した。また、代表点の運動をランジュバン方程式で表すことにより、観測される物理量が、短い観測時間ではクエンチド平均に、また無限に長い観測時間ではアニールド平均(平衡系の平均)になることを示し、自由エネルギーランドスケープによる統計力学の枠組みが、遅い緩和によって平衡に達し得ない非平衡系に適用できること、すなわち冷却速度依存性などの解析に用いることができることを示した。 3.具体的に、ガラス形成過程におけるエントロピー・比熱の冷却速度依存性が、自由エネルギーランドスケープ描像で説明できることを示した。 4.また、α緩和、速いβ緩和、遅いβ(Johari-Goldstein)緩和が、自由エネルギーランドスケープ上の代表点が、大きなベイスン間のジャンプ、小さなベイスン間のジャンプ、ベイスン内の新津的な緩和として、統一的に説明できることを示した。 5.複雑な構造を持つネットワーク上の拡散過程の初到達時間分布を解析し、初到達時間分布の特徴からネットワークの構造の知見が得られることを示した。
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