2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540410
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎藤 幸夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162240)
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Keywords | キラル対称性の自発的破れ / 相互阻害効果 / モンテカルロ・シミュレーション / 反応速度論 / ヘテロエピタキシャル系 / 柱列 / 濡れ |
Research Abstract |
磨り潰しながら溶液からキラルな結晶を成長させると、片方のキラリティを持ったものだけが生き残るという実験がある。この自発的対称性の破れを理解するため、結晶成長に対する格子気体模型に磨り潰しの効果を取り込んだモデルを提案し、モンテカルロ・シミュレーションを行った。その結果、磨り潰しがなければ結晶クラスターはキラル対称なラセミック混合物となり、磨り潰しがあれば片方のみが生き残ったホモキラルな状態となることが示された。完全にアキラルな初期状態から出発すると、途中ラセミックな状態を長く保持するが、そのときキラリティの異なる結晶クラスターが多数接触することが見出された。やがて揺らぎで片方が多数派になると、その差が拡大する。これは異種クラスターが接触するとき互いに表面を覆って成長を阻害する相互阻害効果で説明される。つまり、少数派の結晶クラスターにとっては阻害効果が相対的に大きく、クラスター数の差が拡大していく。キラル分子濃度に対する反応速度論の式に非線形効果をもたらし、数値積分するとシミュレーション結果を定量的に説明できた。また鏡像体過剰率に対する時間発展の式は時間依存のあるランダウ方程式と似た形式となる。ただし、変分関数は存在せず、係数は時間依存性を持っている点が本質的に非平衡系である。 ヘテロエピタキシャル吸着系では基板と吸着層の格子定数の違いに起因する歪みを避けるため、基板表面に柱列という微細加工を施す実験が行われている。吸着層が柱の上に乗ったCB相から柱の間の溝に落ち込んだW相(真の平衡状態)へ緩和するかどうかをモンテカルロ法で調べた。そして濡れ性が低いとCB状態が準安定であることを見出し、エネルギー障壁を理論的に計算した。
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Research Products
(16 results)