2009 Fiscal Year Annual Research Report
交差する振動磁場中の原子の擬エネルギー構造と量子制御
Project/Area Number |
19540413
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 健一 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (90228742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前島 展也 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (90390658)
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Keywords | 原子・分子物理 / 光物性 / 超格子 / 量子制御 / フロケ状態 / 動的局在 / 振動磁場 |
Research Abstract |
本年度は、従来のFourier-Floquet展開法(FF展開法)に代わって、メーラー演算子による時間発展法に基づいた新規な方法を開発し、これを交差する振動磁場下の一電子原子の問題に適用して、擬エネルギー状態および光吸収スペクトルを数値計算した。この方法は、FF展開法のように巨大フロケ行列を対角化するステップが不要であり、さらに擬エネルギーと光吸収スペクトルを同時に求めることが可能なので、数値計算の効率性において大きな利点を有すると考えられる。具体的には、最初に、水素原子の主量子数n=2まで取り込んだ小規模系でのデモ計算を実行し、既に数値結果が分かっているFF展開法と比較して精度や効率性に関するチェックを行った。次に、FF展開法では計算が困難になるような高い励起状態(n=4まで)を取り込んだ計算を行い、計算結果の物理的な解析を行った。とりわけ、振動磁場の強さが大きくなるに従い、擬エネルギー状態間の複雑な結合が現れ、光吸収スペクトル形状にも有意な相違が見出された。この研究の当初の目的の一つである半導体における動的Wannier-Stark状態との比較を行うと、この結合は当該の振動磁場下の原子においてac-Zenerトンネリングと同じような役割を果たしていると理解される。本研究で開発された方法を、THz波に駆動された半導体の励起子フロケ問題のようなより複雑で大きな系に適用すること可能になると期待される。さらに、これによって今まで未踏であるフロケ状態のおける量子制御の研究が大きく展開することも期待される。以上の研究結果は、当該分野の主幹学術誌である米国物理学会誌Physical Review Aに既に掲載されている。
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