2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540424
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
兵頭 政春 National Institute of Information and Communications Technology, 未来ICT研究センターナノICTグループ, 主任研究員 (30359088)
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Keywords | レーザー冷却 / 磁気光学トラップ / 磁気トラップ / ルビジウム原子 / 磁場補償 |
Research Abstract |
本研究課題は、研究代表者が考案した特殊な電流パターンを用いた原子トラップを試作してルビジウム原子を超高真空中で捕獲・冷却し、従来型のミラー磁気光学トラップ装置(ミラーMOT)と比較して原子がより効率的に捕獲されること、ならびに従来よりも少ない電流で磁気トラップ(MT)を構成できることを実証することを目的として実施された。本年度は、磁場補償を行ったミラーMOTによって捕獲されたルビジウム原子を光ポンピングを経てS型MTへ高効率に移行する実験において、光ポンピング条件や磁場の立ち上げ条件の最適化を実施し、従来のZ型MTと比較して省電力化が可能であることを実証した。 MTへの効率的な移行を実現するため、MOTを圧縮した後に2msのモラセス冷却を行い、z軸方向に一様磁場を付加して10μWの共鳴光を1.7ms間照射することによって光ポンピングを実施し、その直後に捕獲用磁場を急速に立ち上げた。その結果、ルビジウム原子はモラセス冷却直後までの間に11μKまで冷却され、最終的に54%の原子がMTへ移行された。一方、従来型ミラーMOTによって捕獲された原子はすべての段階で磁場補償型ミラーMOTの場合の1/2に留まり、磁場補償の効果が改めて確認された。磁場補償型ミラーMOTにおける光ポンピングからMTへの移行効率は約70%と推定され、これは原子スピンの最大偏極率が90%であることと、ポテンシャル形状の不整合による捕獲効率が80%程度であることによって説明された。MTへの移行効率は従来のZ型トラップで報告されているものと同程度であり、本研究によって開発された低消費電力のS型トラップを従来のZ型トラップに置き換えて使用できることが実証された。
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