2009 Fiscal Year Annual Research Report
各種顕微分光法による膜破壊性ペプチドと膜との相互作用機序の解明
Project/Area Number |
19540425
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大場 哲彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (10250664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 和夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80115394)
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Keywords | 膜破壊性ペプチド / 顕微分光 / ミューラ行列イメージング / 膜流動性イメージング |
Research Abstract |
本研究の目的は、我々の研究室でこれまで開発してきた膜流動性イメージング法とミューラ行列イメージング法、本研究で新たに開発する顕微分光法を組み合せて、本研究で新たに提案する「合成膜破壊性ペプチドの設計指針」に基づいて、膜破壊性ペプチドの脂質膜への作用機序を明らかにすることである。 まず、これまで広く研究されてきた代表的な膜破壊性ペプチドであるメリチンと脂質膜と相互作用機序を、膜流動性イメージング、示差走査熱量測定、蛍光分光などの多くの方法を組み合わせて研究した。その結果、低温側で現れるディスクミセル構造は、脂質分子間のパッキングがゲル相の膜と同程度に強い構造を有していること、また、高濃度で現れる球状構造体は、二分子膜構造をとるものの、脂質分子の回転運動は通常の膜よりも速く、磁場で配向するという、これまでの定説をくつがえす興味ある性質を持つことを明らかにした。また、この球状構造体は、膜破壊性ペプチドのある種の性質から生ずる一般性のある構造である可能性を示唆した。 これらの相互作用のあり方が一般性を持つものかどうかを明らかにするために、短鎖リン脂質であるDHPCを膜破壊性ペプチドに見立てて、脂質膜との相互作用を検討した。その結果、低温側でのディスクミセル構造はメリチン系とほぼ同様な構造的特性をもつものの、高温側で現れる大きな構造物は、メリチン系で現れるような球状の構造体をとらず、微視的な相互作用のあり方も大きく異なっていることがわかった。これらの結果は、膜破壊性ペプチドの「両親媒性」という一般的な特性だけでは、脂質膜との相互作用を決めることはできず、ペプチドの個々のアミノ基と脂質分子との相互作用、ペプチド分子間の相互作用が膜破壊性ペプチドの活性に寄与していることを示すものである。
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