2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540429
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新屋敷 直木 Tokai University, 理学部, 教授 (00266363)
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Keywords | 水 / 水溶液 / ガラス転移 / 過冷却液体 / 緩和現象 / 複素誘電率 / 協同運動 / Johari-Goldstein |
Research Abstract |
本研究では様々な物質の水溶液あるいは水を含んだ物質の広帯域誘電分光(BDS)測定を30GHz〜10μHzの周波数域で行い,液体からガラス状態までの誘電緩和を観測する.ガラス転移温度近傍で溶質と協同運動しα緩和に寄与する水と水固有の速さで動くβ緩和の,2種類の水の一般的な特徴と物質構造依存性を明らかにする。また,水溶液と水以外の液体の溶液で観測される緩和を比較し,水溶液の特異性を調べる。 フルクトース水溶液で液体状態からガラス転移温度までの広い温度域で広帯域誘電分光測定を行い,他の水溶液と同様に,水とフルクトース分子の協同運動がα緩和として観測され,水固有の速さの水分子運動がβ緩和として観測された。温度が下がるにつれ,水とフルクトース分子の協同運動性が増加しα緩和が発生する事が示された。また,フルクトース水溶液でも従来アルコールや高分子水溶液で観測されてきたα,β緩和に寄与する2種類の水分子運動の特徴が共通である事がわかった。またフルクトースの濃度依存性によりα緩和とβ緩和の緩和時間の相関がcoupling modelによる理論的予測と一致する事を示した。 水の融点以下で氷結したタンパク質水溶液のBDS測定を80-273Kの温度域で行った。その結果,不凍水の緩和,氷の緩和,200K付近で緩和時間が100sになる緩和が観測された。これらの3つの緩和の緩和時間が100sになる温度は,断熱カロリメトリーによってタンパク質水溶液で観測された110K,135K,200K付近のエンタルピ-緩和の原因となる分子運動であることがわかった。また,不凍水の緩和は氷結しない水溶液で観測されたβ緩和と同様な特徴を示すことが明らかになった。氷結した合成高分子水溶液でもタンパク質水溶液と同様な緩和が観測された。
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Research Products
(11 results)