2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540429
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新屋敷 直木 Tokai University, 理学部, 教授 (00266363)
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Keywords | 水 / 水溶液 / ガラス転移 / 過冷却液体 / 緩和現象 / 複素誘電率 / 協同運動 / Johari-Goldstein |
Research Abstract |
本研究は様々な物質の水溶液の広帯域誘電分光(BDS)測定を30GHz~10μHzの周波数域で行い,液体からガラス状態までの誘電緩和を観測し,溶質と水の協同的な運動によるα緩和と,水固有の速さで動くβ緩和の2種類の緩和の一般的な特徴と物質構造依存性を明らかにする事を目的とする。 Kawaiらによる断熱カロリメトリーを用いた20%(w/w)ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液の熱容量とエンタルピー緩和速度測定[Biophys.J.2006,90,3732]により,3つのエンタルピー緩和が観測された。断熱カロリメトリーで得られる情報は1000秒付近の緩和時間を持つ緩和に限定されるため,我々は様々な濃度のBSA水溶液の広帯域誘電分光測定を2mHz-1.8GHzの13桁の周波数域,80-270Kの温度域で行った。その結果,緩和時間が100sとなる温度が110,135,200K付近の3つの緩和が観測され,断熱カロリメトリーの結果と良く一致した。110K付近で緩和時間が100sとなる最も速い緩和は水和層にある不凍水によるβ緩和である。中間の速さの135K付近で緩和時間が100sになる緩和は氷によるものである。200K付近で緩和時間が100sになる最も遅い緩和は水和したタンパク質の局所的な分子鎖の揺らぎに起因するα緩和と解釈した。水和層のタンパク質のガラス転移温度(200K)付近で不凍水緩和の緩和時間の温度依存性が変化し,これが凍結しないグリセロール-水-ミオグロビン溶液の水の副緩和のものと同様である等の実験事実から,この解釈は正しいと考えられる。水和したBSAや他のタンパク質で得られた全てのデーターは水の副緩和と水和層のタンパク質のコンフォメーションの揺らぎが,分子複雑系の緩和現象の不可分な階層構造である事を示した。
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Research Products
(14 results)