Research Abstract |
アスペリティの連鎖・連動破壊の状況を調べるために,まず,釜石沖の繰り返し地震の破壊過程を詳細に調べた.この地震では,近傍の一回り小さな地震の震源域におけるすべり量が地震によって異なり,そのすべり量はその一回り小さな地震の活動履歴に依存することを前年度に明らかにしたが,それをより詳細に検討して,それが間違いないことを確かめた. 次に南海トラフ沿いの低周波微動の数値シミュレーションを行った.東南海・南海地震を想定した固着域の深部延長に小さな速度弱化域を多数配置してシミュレーションを実施した結果,アスペリティの連鎖破壊が生じ,かつ微動の継続時間や移動速度等について現実の観測値とよく一致する結果が得られた.このことは,南海トラフ沿いの低周波微動が,三陸沖等で見られる群発地震と同様に,小さなアスペリティの連鎖破壊で生じていることを強く示唆している. さらに,1994年三陸はるか沖地震(M7.7)の最大余震(M7.2)のごく近傍でM6程度の繰り返し地震が発生しており,それがこの最大余震の発生があっても再来間隔が揺らがなかったことが気象庁から報告されたため,この最大余震の破壊過程について詳細に調べた.その結果,この最大余震と繰り返し地震は震源(破壊開始点)は近接しているものの,最大余震の破壊は,繰り返し地震とは反対側に向かって伝播しており,そのために最大余震が繰り返し地震に与えた影響が小さかったことが明らかになった. 以上から,アスペリティが隣接していた場合,連鎖破壊がしやすくなるものの,その破壊パターンは,過去の履歴と破壊の伝播方向に強く異存することが明らかになった.
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