2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540438
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
河原 純 Ibaraki University, 理学部, 准教授 (80282276)
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Keywords | 地震波エンベロープ / 地震波散乱 / 介在物 |
Research Abstract |
平成20年度は、前年度におこなった介在物分布モデルによる波動伝播の数値シミュレーションについて、新たにシミュレーション事例を追加した上で、その平均波形やエンベロープを既存の諸理論と比較した。シミュレーションでは、周囲の媒質と速度や密度の異なる円形介在物のランダム分布による2次元SH波の多重散乱過程を厳密に再現した。まず、シミュレーション波形群のアンサンブル平均に関してFoldy理論とBeltzer-Brauner理論との比較をおこなった。前者の理論は平均波形(それゆえ主要動エンベロープ)を記述する古典的理論として知られているが、高速度介在物が存在する場合に因果律を破ることが指摘されており、その点を改善したものが後者の理論である。比較の結果、予想に反して、平均波形は介在物の性質によらず常にFoldy理論で記述可能であることがわかった。このことは、個々の波形が因果的でも、その平均は因果律を満たすとは限らないことを示唆し、その理由の解明は今後の課題である。次に、波形群から二乗平均平方根エンベロープを求め、コーダ(後続波)エンベロープを記述するいくつかの理論との比較をおこなった。その結果、研究代表者が以前に研究対象とした空隙の場合に比べ、いずれの理論も適用範囲が狭いことが示された。このことは、周囲とのコントラストが強い空隙に比べ、低コントラストの介在物では散乱の異方性が強いため、便宜上等方散乱を仮定する諸理論ではコーダエンベロープを定量的に記述できないことを示唆する。ただし現実のリソスフェアと同程度の弱い不均質性を仮定するなら、コーダエンベロープの形状を表すパラメータであるコーダQについては、単純な1次等方散乱理論でも比較的よく説明できることも示された。なお、研究成果の一部に関する雑誌論文をまもなく投稿予定である。
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Research Products
(4 results)