Research Abstract |
近年の反射法地震探査では,長測線で高密度のデータを取得するようになってきた.この様なデータに屈折法的解析を行うことによって,測線下の詳細な速度構造を得ることができる.また,後続波部分(広角反射部分)は,反射法解析で用いられていない部分で,対応する反射面の速度コントラストを推定することができる.従って,このような解析は,通常の反射法解析では用いられていない情報を使うという点で,反射法と相補的な意味を持ち,両方の解析を同時に行うことによって,構造推定の精度と信頼性を高めることができる. 本研究では,関東山地東縁で行われた高密度地震探査及び糸魚川-静岡構造線北部で行われた高密度地震探査に,上記の統合解析を実施した.関東山地東縁で行われた探査の場合,詳細な屈折法解析から,伊豆弧衝突の前縁であった藤の木-愛川線の深部構造が,その浅部は速度急変体として,深部は広角反射面として捉えることに成功した.これによって,反射法解析から提唱されていた伊豆弧(丹沢ブロック)の剥離と衝突過程が,より深部まで確かめられ,地質学上の重要な知見となった.また,フィリピン海プレートの沈みこみも,広角反射波によって,より深部まで追跡できた. 糸魚川-静岡構造線のデータについても,同様の解析を行った.その結果,地殻最浅部における同構造線及び過去の変形フロントであった小谷-中山断層の形状が,速度急変体として捉えられ,反射法で得られたイメージとよい一致を示した.また,その下の先第三系の基盤も広角反射波として精度よく捉えることができた.この結果,この構造線北部の構造は,thin-skinned tectonicsで支配されていることが明らかとなった.また,中央隆起帯直下の深さ10km付近では反射体が分布しており,さらに,先第三系基盤と糸魚川-静岡構造線に夾まれた部分は,少なくとも中央隆起体東部下までは低速度層として潜り込んでいることがわかった.これは,これまでの反射法地震探査では,明らかでなかった知見である.
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