Research Abstract |
応力測定は地震発生・断層破壊伝播のメカニズムを理解するために,重要不可欠である.しかし,地下深部の応力の計測は困難で,これまで様々な手法は提案されてきたにもかかわらず,確実な手法が存在しない.我々は複数の手段を総合的に活用して,それぞれの長所を発揮し,短所を補い,応力を測定することを提唱している. 平成19年度はまず,南海トラフ地震発生帯掘削計画の第315回航海(Nan Tro SEIZE,Exp315)において,非弾性ひずみ回復(Anelastic Strain Recovery,以下ASRと称する)の計測を行い,海洋底深層掘削のコア試料を用いたASRの計測に成功した.次に,原位置で計測したASR(非弾性ひずみ回復)の発生メカニズムや異方性特性を明らかにするための室内実験を始めた.その着眼点は,(A)2種類非弾性ひずみ回復コンプライアンスの特性解明,(B)非弾性ひずみ回復の異方性特性解明である.具体的には,まず適切な室内実験用の岩石サンプルを選定し,人為的に先行応力を負荷する,次は,その応力解放後の非弾性ひずみを測定するという手順である.先行応力は,非弾性ひずみが発生するために地殻応力が長年負荷していた状態を模擬するためのものであり,十分に長い時間にわたって負荷し続ける必要がある.現在は,その実験の途中であるが,次年度にその室内実験の予察結果を整理し,学会等で発表する予定である.また,台湾チェルンプ断層掘削プロジェクトの掘削孔Hole-Bで得られたブレークアウトとのASR計測の結果を解析し,比較検討を行った.その結果,地震断層の付近で主応力の方向が急激に変化したことを突き止めて論文発表をした.
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