2008 Fiscal Year Annual Research Report
フィルン空気の解析による過去100年間の温室効果気体循環の解明
Project/Area Number |
19540454
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
菅原 敏 Miyagi University of Education, 教育学部, 准教授 (80282151)
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Keywords | フィルン空気 / 二酸化炭素 / 同位体比 / 重力分離 / 空気年代 |
Research Abstract |
南極のYM85地点と北極のNGRIP観測拠点において採取されたフィルン空気のアーカイブサンプルを用いて、その二酸化炭素濃度と炭素同位体比の精密分析を実施した。YM85地点について、従来のフィルン拡散モデルによる計算では、測定した濃度の深度分布を再現することが不可能であった。この現象は、過去に実施されているフィルン空気の研究では考慮されていなかったフィルン圧密過程の非定常効果によるものであることが判った。そこで、従来のフイルン空気拡散モデルを、涵養量の時間変化を含むダイナミック圧密モデルとカップリングさせて、新たなフィルン数値モデルを構築した。雪氷物理の研究を進めている国立極地研究一所の雪氷研究グループと協力し、フィルンの密度分布データを用いて、ダイナミック圧密モデルの妥当性を検討した。その結果、YM85地点の深度65m以深の層では、フィルン空気の年代が予想以上に古く、最深部では1910年代の空気が保持されていたことが判明した。さらに、炭素同位体比に対して、同様のカップリングモデルを適用し、同位体比に対する重力分離と分子拡散の効果を計算によって推定した。分子量の違いによる拡散係数の違いに起因する効果は、深度65m付近で最大となり、補正量は0.15パーミルとなった。観測された炭素同位体比を、重力分離と分子拡散の効果について補正し、さらに二酸化炭素濃度の有効年代を時間軸にとることで、最終的に南極における過去100年の炭素同位体比の変遷を導出することに成功した。また、重力分離や分子拡散の影響が、フィルン空気だけではなく、成層圏大気の年代を推定する上でも重要であることが判った。
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