2009 Fiscal Year Annual Research Report
斜面上を流れる深層流の力学的考察とパラメータ化の研究
Project/Area Number |
19540456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤尾 伸三 The University of Tokyo, 海洋研究所, 准教授 (00242173)
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Keywords | 海洋物理学 / 地球流体力学 / 深層流 / 海溝 / 変動流 |
Research Abstract |
層境界面と海底面の交差を許容する多層の浅水モデルによる予報的数値シミュレーションを実施し、ハインドキャストによる流速場を観測された流速と比較した。日別の風の再解析データを用いると、大気の低気圧・高気圧が励起する変動流が深層で卓越し、その変動はロスビー波として西に伝播する。流速計で観測を行った三陸沖では30~50日の周期の変動流が卓越するが、モデルでもほぼ同周期の変動が卓越し、その原因を風と特定することができた。しかし、位相は一致せず、流速も観測の1/5程度と弱い。モデルに与えた成層構造などロスビー波の伝播の再現性などが今後の課題である。 変動流は長期で時間平均を取ると、一般に消えるが、非線形が強く働く領域では残差が残る。本研究では、ネプチューン効果と呼ばれ、変動流と斜面の非線形結合が日本海溝周辺において強く働き、斜面上に定常流を作ることを期待したが、本モデルでは定常流はほとんど生成されなかった。原因としては、(1)モデルの変動が観測値の1/5程度と弱かったこと、(2)海溝斜面では層厚が大きな水平勾配を持つが、層厚を正に保つ必要性が層厚の水平拡散を引き起こし、斜面上の流れを弱めたこと、(3)数値的なノイズを抑えるため、比較的大きな海底摩擦係数を用いざるを得なかったことが挙げられる。 南からの深層水の流入による熱塩循環によって駆動される深層流を見るため、1層線形の数値モデルに簡単化して計算を行った。観測ではウェーク水路から流入した深層水はシャツキー海膨の南から本州へと流れるが、モデルではシャツキー海膨周囲を循環し、天皇海山のギャップを北東太平洋海盆へと抜けた。一方、日本海溝や伊豆小笠原海溝では湧昇流よって低圧性の孤立した循環流が形成された。湧昇による循環は、海溝の流れとしては、すでにネプチューン効果とは別の要因として挙げらたものであるが、モデルの流速は観測に比べてはるかに弱く、現実を説明できないと考えられる。
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