2008 Fiscal Year Annual Research Report
短寿命宇宙線誘導核種をトレーサーとする水文科学研究
Project/Area Number |
19540458
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井上 睦夫 Kanazawa University, 環日本海域環境研究センター, 助教 (60283090)
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Keywords | ガンマ線測定 / 宇宙線誘導核種 / 地下水 / 降水 / 物質循環 |
Research Abstract |
陸水における宇宙線生成核種(^3H、12.3年;^7Be、53.3日;^<22>Na、2.60年)、天然放射性核種(^<226>Ra、1600年;^<228>Ra、5.75年)、人工放射性核種(^<137>Cs、30.2年)など様々な起源、半減期をもつ放射性核種濃度の比較により、河川流域を舞台とした降水の涵養時の土壌との相互作用、陸水の循環メカニズムを探った。特に本年度は、石川県西部に位置する手取川流域を実験フィールドとし研究を進めた。採取地点におけるイオン交換樹脂を使用したバッチ法により、300Lの地下水、100Lの河川水試料および20Lの降水、沿岸海水試料より目的核種を分離した。これら試料に、尾小屋地下測定室に設置したゲルマニウム検出器を使用した低バックグラウンドγ線測定(^3H濃度は、電解濃縮後、β線計測)を適用し、目的核種を定量した。さらには降水涵養時の鉱物/水(表層土壌/降水)間におけるこれら核種の挙動(分配係数)を調べるため、シミュレーション実験をおこなった。 本研究の結果、陸水試料における降水起源の宇宙線精製核種、^3H、^7Be、^<22>Na濃度からは、流動過程における滞留時間の経過とともに、陸水から降水の寄与が少なくなる状況が把握できた。逆に涵養以降に供給されるラジウム同位体や^<137>Csからは、シミュレーション実験の結果と合わせることにより、涵養後の流動過程の環境に関する知見が得られた。これら複数の核種の情報の組み合わせることにより、通常の化学組成では明らかにできなかった時間軸の情報を含む、陸水の履歴書として役に立つことが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)