2009 Fiscal Year Annual Research Report
長期再解析データによる人間活動を含めた陸域大気水循環の変動の評価
Project/Area Number |
19540467
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
谷田貝 亜紀代 Research Institute for Humanity and Nature, 研究部, 助教 (60353447)
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Keywords | 気候変動 / 水循環 / 環境変動 / 大気現象 / 水資源 |
Research Abstract |
ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)および気象庁(JMA)の再解析データを用いて、大気水収支法により蒸発散量を計算した。我々はアジアの降水量グリッドデータ(APHRODITE)を作成するシステムを所有するため、再解析データのグリッドに合わせて降水量グリッド値を計算することにより、残さとしての蒸発散量の誤差を減らすことが出来る。APHRODITEは平成21年度初めに1961-2004年の44年分のプロダクト(APHRO_V0902)をリリースしたため、今年度はECMWF40年再解析(ERA40)のN80ガウシアングリッド上の水蒸気発散量データを用いた。推進費の当初計画外の仕様のため雨量計データの入力数を整える計算に至らなかったが、それでも残さとしてのトレンドを計算した。特に夏季、中央アジアのアラル湖周辺や、インドのラジャスタン沙漠周辺で顕著な蒸発散量の増加がみられた。予報値は増加していないため、これは人間活動による河川水や地下水の農業などへの利用の増加と推測された。トルコでも残さの蒸発散量に増加がみられたが、発散量そのものの増加傾向があり、人間活動の影響についてはより詳細な分析が必要であることがわかった。中国は、対象期間の降水インプットデータ数の変遷が少ないので、比較的きちんとトレンドを計算できる。これにより、黄河の下流では従来から検出されていた蒸発散量の増加がみられたが、上流・中流は降水量そのものが少ないためもあり、蒸発散には有意なトレンドは検出されなかった。これらの成果を、2010年1月のアメリカ気象学会で発表したところ、定量評価という点では、冬季の雨量計の捕捉率補正をするという課題が残されているというコメントがあった。残さによる蒸発散の計算精度を上げるには、さらなる主夫が必要であることがわかった。
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