Research Abstract |
直下型地震の震源は地下10-20kmに位置しており,この深度において地殻の強度が最も高いためであるとされている,この地殻強度の深度方向の変化は,脆性変形領域で石英質岩の変形機構として摩擦すべりが卓越し,延性変形領域では転位クリープが優勢であるとするモデルに,石英質岩変形実験結果を適用することにより説明されている.しかし,地殻の強度断面において,その深度(地下10-20km)は地震学的・地熱学的見積りと調和的であるが,その強度値は一桁高いものとなり,この地殻強度の不一致が「地殻応力問題」と呼ばれ,長年議論されている。この不一致の原因には様々なものが考えられるが,その一つとして,すべての地殻条件において延性変形領域の変形機構が転位クリープであるのか不明であるということが挙げられる.本年度は,この石英質岩の延性領域の変形機構の解明を目指し,領家変成帯における中変成度地域(直下型地震の震源域)において細粒メタチャートの試料採集を京都府和束地域において系統的に行い,その変形機構を静岡大学機器分析センター設置のSEM-EBSD測定装置を用いて石英の格子定向配列を解析した.その結果,直下型地震の震源域の細粒メタチャートは従来考えられていたような転位クリープではなく,拡散クリープで変形しているということが明らかとなった.地殻の延性変形領域の一部が拡散クリープで変形した場合,その領域では著しい歪軟化(もしくは応力降下)が起きることが予想される.この応力降下が,長年論争の続いてきた「地殻応力問題」を解く可能性があることが示唆された.
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