Research Abstract |
年度前半に,平成19年度導入の加熱用炉の断熱が不十分で,実験目標温度の800℃に加熱時に,炉側面温度が異常上昇することが判明した.これは圧力容器破裂事故につながり非常に危険性であるため,平成21年度前半は加熱用炉の断熱性能向上の改良を行った. 改良後,温度800℃,歪速度1.0×10^<-5>s^<-1>では全体に均質な塑性変形挙動,5.0×10^<-6>s^<-1>では著しい応力降下と変形集中と,平成20年度同様,一見歪速度の違いにより挙動が異なる結果が得られた.しかし平成20年度と21年度の結果を合わせると,細粒長石の挙動の違いは歪速度の違いには対応しない. 均質な塑性変形挙動を示した実験では,定常応力と歪速度に線形関係がある.一方応力降下と変形集中を示した実験は,定常応力は正の歪速度依存性があり,かつ歪速度は応力の3.2乗に比例する.さらに実験試料のX-CT解析から,歪集中部分での分離はない.従って,均質な塑性変形挙動は粒界滑りなどの粒径依存クリープ,応力降下と変形集中を示す挙動は転位クリープと,変形機構の違いによる挙動の違いと考えられる. 実験によって変形機構が異なった原因は,細粒長石焼結体中の水の影響が考えられる.均質な塑性変形挙動を示した細粒長石焼結体は2003年夏に準備し,夏の高い湿度を試料が吸着,一方応力降下と変形集中を示した細粒長石焼結体は2004年の冬に準備し,冬の乾燥した空気のため吸着水が少なかった可能性がある. 以上,交付申請書に記載した当初には想定していなかった,様々な部品調整の困難に直面,さらに実験を始めると,細粒長石焼結体作成時の空気中の湿度による挙動の違いという意外な結果が得られ,予想以上の長石の挙動の複雑性が明らかになった.一連の結果で当初目標は達成できなかったが,いくつかの技術的課題を解決したとともに,今後解決するべき技術的課題が明らかになってきたことは次につながる成果であると考えられる.
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